「先生」

「お、来たなクラス委員」

「プリントですか?」

「お、さっすがーわかってるねぇ。ほい、こいつを午後の授業が始まる前に配っといてくれ」

そういうと、いつものように麻生先生がプリントの束を目の前に置いた。
普段なら、すぐにそれを受取るが、今日は受取るべき手に、あるものを持っている。

「ん?どうした

「あの…」

「なんだ?おねだりか?」

ニヤニヤと楽しそうに微笑まれ、僅かに頬を膨らませる。

「ち、違います!」

「なんだ、残念。今なら誰もいないし…」

先生の座っていた椅子が軋む音を立てたかと思うと、先生の顔が目の前に近づいて来た。

「…キスのひとつでも、やろうと思ったんだけど?」

授業の時には聞けない、甘い囁きにはいつまで経っても慣れない。
心臓が爆発するかのように鼓動が高鳴り、自然と顔が赤くなる。

「ははっ…全く、本当にかーわいいったらないねぇ」

「そ、そんなイジワルするなら…これ、あげませんっ!」

僅かな強がりで、後ろ手に隠していた物を先生の前に一度差し出してから、抱え込む。

「んー、なんだ?」

「……今日…麻生先生の、お誕生日…ですよね」

「へ?」
「え?」


誕生日…と聞いて、驚いた先生を見て、逆に私も驚いてしまう。



もしかして、間違えているのだろうか。
だとしたら、滑稽もいいところだ。




先生は顎に手を置きながら、卓上カレンダーを指で示した。

「えーと…今日は11月6日…」

「は、はい」

「ナルホド…だから今日はやけにプレゼントが多いの、か」

そう言って先生が一番下の引き出しを開ければ、そこにはラッピングされた沢山のプレゼントが押し込まれていた。

「…で?も用意してくれた、と」

「は、はい」

「そっか…じゃ、ちょっと待ってろ」

そう言うと、先生は、よいしょっと椅子から立ち上がり、開いていた扉を閉めて鍵をかけた。

「これでよし、と」

「先生?」

何故わざわざ鍵をかけるのかと問うように首を傾げれば、にっこり笑顔で抱きしめられた。

「折角お前がはじめて恋人の誕生日を祝ってくれるっていうんだから、せめてこれぐらいは…な」

恋人の誕生日、という言葉に、頭のてっぺんまで熱が伝わったかのように熱くなる。

「さて、それでは、ありがたくいただきましょう」

「はい…」

受取ってくれるんだと思い、手を動かそうとするが、抱きしめられていて手が動かせない。

「あの、先生」

「ん〜?」

「このままじゃ渡せないです」

「違う違う」

抱きしめられたまま、先生の方へ顔を向けると、その目は楽しそうに笑っている。

「まずは、お祝いのキスから…な」

「え…」

「キスは教えたろう?」

「は、はい」

「だから、俺の誕生日に、お前からのキスが欲しい」

「……」

「お前が選んでくれたプレゼントも嬉しいが、キスも欲しい」

大好きな先生にそんな風に言われたら、何が何でもプレゼントしたくなる。
けれど、背伸びをしようにも、この身長差では先生の口には届かない。

「せ、先生」

「あぁ、そうか…じゃあ、これならいいか?」

椅子に座ることによって、身長差をなくしてくれたことに安堵し、緊張しつつも笑顔を作る。

「お誕生日おめでとうございます…麻生先生」

そして、そのまま顔を近づけ、キスをする。
恥ずかしくて、すぐに離れると、先生は指を立てて横に揺らした。

「ぶー、もう一回」

「え?」

「先生、じゃないだろう?……

、と名前を呼ばれて、このまま倒れるんじゃないかってくらい、鼓動が跳ねる。

「ほら、…もう一度」

「は、はい…」

今度の緊張は、キスすることの緊張なのか。
それとも、名前を呼ぶことの緊張なのか。
どちらかわからないが、大きく深呼吸をしてから…恋人の名を、口にした。

「お誕生日おめでとうございます…時雨、さん」

恋人と交わす、誕生日のキスは…いつも以上に甘くて、長い。










「手帳ありがとうな、使わせて貰うよ」

「…はい」

「ははっ、まーだ顔真っ赤だぞ〜

ペンを持って手帳を開いた先生に指摘されて、頬を押さえる。

「誰のせいですか!」

「お前からのプレゼントが、あまりにも嬉しくて、つい俺からもお返しを…ってな」

力が抜けてしまった私は、椅子に座っている先生の膝に座り込んでしまっている状態で、まだ立てない。
そんな私と額をこつんと合わせると、今日も先生は素敵な声で甘い囁きをくれる。

「これでもまだ手加減してやってるんだぞ〜?」

「……まだ、ですか」

「俺の本気は、こんなもんじゃすまない…が、さすがに校内でこれ以上は、な」

鼻先に音を立ててキスをすると、麻生先生は私がプレゼントした手帳に何かを書き始めた。

「合ってるか?」

そう言って私に見せてくれた手帳には、私の誕生日に花丸が書かれていた。

「今から楽しみにしてろよ」

「…はい!」





Happy Birthday…麻生時雨先生





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★ Happy Birthday ★

麻生時雨

お誕生日おめでとうございます、麻生先生!!
まさかCDのキャラクターで夢小説書く事になるとは予想外でした。
教師だけども、いやー…麻生先生、動いてくれる動いてくれる。
この行動力がどこかの先生にもあったらば、幸せに遠い世界に旅立てるのにっ!
麻生先生は鳥さんがCVなんですが、上手いです…色々(笑)
個人的にはセカンドキスよりファーストキスの方が好きです。
ファーストの、こー…耐え切れないって時の麻生先生が個人的にツボ。
そんぐらいぷつっと切れるといいよね(問題です(笑))
ちなみにこちらはマイカレのヒロインをそのまま使って…いる、つもり。